medium（前編）

「普通は朝早く起きて家族のご飯の支度をするでしょ」
母から電話でこんなことを言われた。結婚した女性（＝妻）がするべきことだという。先日は実家に帰省した際、otoshimoに食卓に並べるお椀や料理を運ばせようとしたら、
「普通は男の人にそんなことさせるもんじゃない！」
と怒られた。我が家は父が生きていた頃は、祖母の教えに従った典型的な昭和の亭主関白家庭で、まぁ父は次男なので祖母とは一緒に暮らしてなかったけど祖母の影響力は絶大なもので、「妻は夫をたてる」という揺るぎない構図が保たれていた。
現代の30〜40歳代の夫婦関係に「妻は夫をたてる」というカタチが無くなったわけではないと思うけど、夫が台所で料理をして妻が風呂に入っているとか、妻が夫に対して叱りつけるとか、具体的に目に見える形で「妻が夫をたてていない」姿に対して母はストレスを感じるらしい。で、二言目には「最近の若い人は違うのかねぇ」
母は父が病気になってから私と弟を育てるために働きにでた。共働きであっても、家事はすべて母の役目。父はご飯の支度も掃除洗濯も一切しなかった。というか、家事が疎かになっているときには母を叱りつけた。母は仕事が遅くなってどんなに疲れていようともすべてをこなさなければならなかった。それが母にとって「普通」だと思っていた。