urashimono

otoshimonoの裏日記。すなわちemixがつらつらと適当に書きます。

やっぱり拍手してはいけない

今年もこの時期がやってきました。さいたま市の小学校金管バンド発表会。最初のカルチャーショックを受けてから*1、何度か鑑賞してるけど*2、5年経ってもスタイルは変わらず。ま、学校現場ですから。
今回は午後の部トップバッターの演奏を聴く予定だったので開会式から拝見させてもらいました。各出演校の校長先生が壇上にずらりと並び、教育長、理事長のご挨拶が続きます。
「今日はみなさん、心に残る、感動的な演奏を、精一杯聴かせてください!」
先生方のごあいさつはこどもたちの心に語りかけます。2000人収容の大ホールの舞台に初めて立つ児童、曲中ソロがある児童、みんなこの発表会のために練習してきたのだから、最高の一日にしようとそれぞれが緊張と期待で胸いっぱいなことでしょう。家族や友達もたくさん応援に来ています。
開会式が終わり、早速演奏の準備にはいるとき、諸注意のアナウンスが。突っ込みたい部分はいくらでもあったのですが、ひとつだけ。
「発表会の円滑な進行上、演奏後の拍手は、指揮者の先生が正面を向いてからするようにお願いします」
はいキター! 私はこれを「拍手禁止アナウンス」と呼んでるのですが、10分そこそこの持ち時間のなかで2曲、3曲演奏する団体があって、その曲間では拍手をしてはいけない、つまり一つの団体の発表がすべて終わってから拍手をするようにということなんですよ。
楽章形式の曲(組曲)を演奏する場合は、曲と曲の間があいていてもまとめて一つの曲とみなすので拍手をしないというマナーはあります。でも、児童たちが演奏する曲はそれぞれ作曲者も曲想も全く違うものを2曲、3曲演奏するのです。軽快なJポップナンバーの演奏が終わってしぃーん…としてるさまはなんとも違和感あります。
例えばコンテストのように、審査員の審査の妨げになるから観客の拍手を自粛させるのなら分かります。しかしこれは発表会。たった今壇上で先生が「感動的な演奏を!」て仰ってたじゃありませんか。なのに感動表現である拍手を禁止すると? しかも「進行上の理由」から。たとえ曲間で拍手をしても十数秒ですよ。その十数秒の感動表現を禁止して再三にわたって禁止アナウンスするというのは「進行上」も矛盾がありゃしないですかね??
これらの違和感や矛盾を回避するために、例えばどの学校も1曲にするとか具体的な方法はあるですよ。それよりも日々の練習の負担減や円滑な進行のほうを優先させることで、そもそもの「音楽」や「楽曲」に対する情操的な部分の育成を妨げてしまっているわけです。おかげで「どこで拍手すればよいか分からないから演奏会は堅苦しくて嫌だ」と敬遠する大人が生まれるわけです。


そもそも演奏後の拍手というのは「上手くできたねー!」「素晴らしかったよ!」「もっと聴きたいよ!」といった観客側の感情表現で、演奏が下手だったり全く感動しなければ拍手する必要などないのですよ。だから「指揮者の先生が正面を向いたら拍手をしてください」というような半ば強要めいたアナウンスも鑑賞マナーを教えるという観点からしても疑問が残る部分が多くて。というか、拍手のタイミングとか、スムーズに滞りなく進行することよりも、音楽に対する純粋な感動のほうがよほど大切にしなくてはならないと思うのですがね。

*1:id:studioemix:20081208

*2:id:studioemix:20101206